ようこそ。ムジカ工房&北村智恵のWebサイトへ。

ムジカ工房は、音楽教育家・北村智恵をサポートする、小さなアトリエです。
北村智恵ピアノ教室、コンサートの自主公演、ピアノ指導者セミナー開催等、行なっています。

レッスンQ&A

Q20 子どもの想像力を引き出すには?

※『ピーターラビットと学ぶはじめてのピアノ教本』に関する質問
Q20

楽譜どおりに指示されたことはできますが、"どのように弾きたい"とか、"その曲の課題を深く、いろんなヴァリエーションで弾く"、"その曲のイメージの絵を描く"、というようなことがとても苦手な生徒がいます。
想像力が乏しく、一つの課題に深く取り組めないのです。
教室の皆の集まる会にも出席しません。同じ教室の、素直な子、想像力が豊かな子との差は歴然としています。
指導者としての未熟さを反省しますが、このような子だからこそ、このテキストが必要なのではないかと思います。
どうにかしてその子を救いたいのです。良い方法を教えてください。

(回答:北村智恵)
→まず、「救う」という発想自体が傲慢ではないかと思います。「理想」があって、それに近づきたい気持ちがあり、努力しているのに良い結果が得られない、という認識が本人の心の中にあるのであれば、「救いたい」「救ってあげたい」という発想は成り立ちます。でも、この場合、本人の中に「求めているもの」が何もないのですから、先生の側から「救いたい」気持ちと思っていることでも、本人にとっては「大きなお世話」かも知れないのです。
 このようなタイプの子どもが、最近、一般的には増えていると思います。でもよく考えてみて下さい。今、ピアノの指導をしているすべての先生が、自分の子ども時代、なかんずく幼児期から、"どのように弾きたいか"、"その曲のイメージの絵を 描く"、"いろんなヴァリエーションで弾く"というようなことがすべて、できていたと言えるのでしょうか?そして今、指導者である自分も生徒といっしょに同じだけそのことを実践していると言いきれるのでしょうか?頭でそう思っていたり、口でそのように言い続けていたとしても、未経験、体験不足の子どもたちにとっては、「具体性」のないことなので、求められていることの意味さえ解っていないというのが現実ではないかと思います。
 私は四十余年間のピアノ指導の中で、自分もパスと絵筆を持ち、子どもたちと同じ画用紙に絵を描き、また「こんなふうに弾きたい」と答えられない(表現できない)生徒には、いくつかの異るイメージをこちらから提示して、「このうちのどの 感じ(がする?)(に近い?)(にしたい?)というふうに、"選ぶ"ことから始めます。そういう具体性の中から、二者択一、三者択一、四者択一、五者択一、十者択一...を、何ヶ月も何年もかけて、考える力、想像する力、発想する力というものを学んで行くのではないかと思うのです。「模倣」も「選択」も、先生の持っていき方ひとつで「個性」の芽生えともなり、「発想」や「想像力」の豊かさにも繋がります。
 その子は今まで「良い大人」に出会ってきていないからそういう状態なのであって、その子が悪いのではありません。その子の親の問題であり、家庭のあり方の問題であり、幼稚園や保育所や学校等、周囲のすべての大人の生き方がその子に反映されていると考えるべきでしょう。そしてその中に、「ピアノの先生」という自分は、具体的に何をしてきたかということが、今、問われているのだと思います。教室での取り組みに参加しようとしないのは、その魅力や楽しさを知らないからであり、保護者や本人に、そのことの重要性をどれだけ理解してもらうための努力や工夫をし続けてきたか、その具体策の準備こそ、本当は、先生(指導者)の力量そのものだと思います。楽をして良い結果は生まれません。
 「救う」のではなく「共に歩む」(=共に何かと闘う時期もあるはずです)ということ、そして、「良い方法」ではなく、そんな子どもだからこそ、具体的には、「模倣」「選択」を利用して「個性」や「発想」や「想像力」や「創造力」に繋げて行く工夫と努力をしましょう。それが「育てる」ということです。「救う」のではなく「育てる」ことで、指導者としての自分も「育つ」はずです。おっしゃるとおり、『ピーターラビットと学ぶはじめてのピアノ教本』は、きっとそのことを可能にしてくれるはずです。




前の記事→Q19 「モペットちゃんのおはなし」の左手がうまくいかない
次の記事→Q21 エスプレッシーヴォで弾かせるためには?

MENU

ページのトップへ戻る