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ムジカ工房は、音楽教育家・北村智恵をサポートする、小さなアトリエです。
北村智恵ピアノ教室、コンサートの自主公演、ピアノ指導者セミナー開催等、行なっています。

レッスンQ&A

Q18 読譜が速くなりますか?

※『ピーターラビットと学ぶはじめてのピアノ教本』に関する質問
Q18

少ない課題で音楽の本質をきちんととらえられるこの本と出会って、とてもレッスンが楽しくなりました。この春、やっと一から教える生徒が入ってきたので、この本1冊だけで、レッスンしていきたいと思っています。そこで一つ不安なのは、読譜に関して、です。
たくさんの曲をしなくても、音符がすぐによめるようになるでしょうか?
音符カードを使ってすぐ反応できるように、最初のときから訓練したりするといいのでしょうか?

(回答:北村智恵)
→初めに、私のほうからお訊ねしたいです。「読譜」とは何か、「音符がすぐ読める」とは何か、「音符カードを使って すぐ反応できる」ことが「ピアノを弾く」ことにおいてそれほど重要なことなのか、という点についてです。
 一般に、巷の音楽教室では、「音符カード」なるものを使って、それを見せたとたん、「ソ!」とか「ド!」とか、フラッシュカードのように、音名を口で言えることを訓練している様子をよく見聞きします。でもそれが「譜が読める」ということなのでしょうか?もしそうだとしたら、それほど「譜が読める子」ばかりたくさんいる(はず)なのに、なぜ自分で自分の音楽を組み立てたり、自分から練習に向かい自分で仕上げて自分の「表現」としての演奏のできる子が、日本にこんなにいないのでしょう。また、音符カードなるものを見て、「ミ!」だの「ソ!」だのとすぐに反応できる子が、鍵盤位置も含めて、きちんとすべての音高を理解・把握しているのであれば、例えば発表会などの舞台で、オクターヴ上やオクターヴ下の間違った ポジションで弾いてしまっている例を、どのように解釈すれば良いのでしょうか。
 私は、多くの指導者が、初めのこの前提のところで大きな誤りをおかしていると考えています。『ピーターラビットと学ぶはじめてのピアノ教本』がなぜ他の本を使わなくてよいのか、原点に戻って考え直していただきたいのです。
 音符がすぐ読める=暗記しているだけで、「理解」していない場合があることを見逃していませんか?
 また、「早く」や「速く」はそんなに大切なことですか?

 何のために?

 「憶えさせる」ために「音符カード」は必要かも知れませんが、「理解させる」ためには、「音符カード」など要りません。
 子どもというものは(大人の初心者でも同じですが)理解さえすれば自分で譜が読めるようになります。そのためには、①最低限の正しい「知識」と、②それを応用する「知恵」が身についていなければなりません。そして、①と②を合わせたものが、その子にとっての「情報」であり、その情報処理を、自分ですること、そこに時間をかけることが、その力の育成であると私は考えています。そして、そのことを繰り返していくうちに、だんだんとそこにかかる時間が短くなって行き、本が進むに従って仕上がりまでの日数が短くなって行くということです。私は、この3巻(3冊)を、そのための時期にあてることに意義があると考えています。そういう考え方の指導者は、「早く」や「速く」や「すぐ」という呪縛から自分自身を解放し、発想を変えなければ、この本を使っても意味がないと思うのです。
 具体的に言うと
は同じ音。


中央のドの音とト音記号の第1線の音(ミ)の間にはレの音が1つあるだけ。
中央のドの音とヘ音記号の第5線の音(ラ)の間にはシの音が1つあるだけ。

③ ②からもわかるように(何週間か何ヶ月かかけて体験すること)世の中のすべての音は、「線」と「間」をたどって 1つずつ順番に上下する。

 ①をきちんと理解させ、②をゆっくり体験し(つまり、ヘ音記号の第5線からト音記号の第1線までの間に音が5つあることを 理解し認識する) 以上①と②は、子どもが理解できるよう、教えなければならない最低限の知識です。また、③も基本的な 知識です。そしてそのあと、①②③を組み合わせる知恵が、その子の読譜力となるわけです。すべての音をカードで「おぼえる」 のではなく!
 この「知恵」を育てるところになぜ時間をかけてはいけないのでしょうか?
 初めの時期に、きちんと時間をかけて理解させ、最低限必要な知識のみ身につけさせたことを確認できれば、あとは それらを組み合わせる応用力(知恵)を育てるだけで充分です。音楽やレッスンが楽しければ子どもは自分でどんどん譜読みし、 練習してきます。
 ちなみに、私の生徒は、ダウン症その他、知的障害を持っている子どもも含め、私が教えてきた生徒全員、譜が読めて、毎週自ら、自分で楽しんで練習してきていることを言い添えておきます。
 知識の数や「早く」「速く」「すぐ」の訓練よりも「知恵」を育てることに時間をかける時期が大切ということではないでしょうか。 もっと子どもの力を信じましょう。




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