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指導ポイント

1巻 ふたりでたのしく/ティギーおばさんのおはなし

ふたりでたのしく(P.51)
 楽典的には初出事項は、右手に出てくるGの音とリピート記号だけだが、この曲におけるレッスン内容とその目的は、これまで世界中のどのピアノ・メソードにもなかった「大きいもの」「大きいこと」である。それは、①自分の音をよく聴くという、音の「聴き方」の具体的指導と、②そのことによる二声部の弾き分け(コントロール技術)、③その力量を持つことで「自分の音」や「自分の音楽」をつくるという、ピアノを弾くことの「基本姿勢」を学ぶページだからである。
 タイトルの「ふたりでたのしく」の「ふたり」とは、子どもがピアノを弾くときの、自分の中での2声(2人分の歌=旋律)のことであり、それはタイトルの英訳でもきちんと表されている(Fun for both hands)。そのこと(右手くんと左手くん=自分の中での2人の対話)を生徒に理解させ、音で表すことができたとき初めて、「この曲が弾けた」ということであって、1回目と2回目が同じ音量で変化がなかったとしたら、当然次の曲に進むべきではない。楽譜に書かれた音を、鍵盤上に正しく移しかえる作業ができただけでは「音楽」ではない、と毅然とした態度で臨む指導者の姿勢が、その子を本ものの「音楽」づくりのできる正当な道へと導く。幼児にそれができないと思いこんでいる先生は子どもをみくびっている先生である。
 またリピートは繰り返しの記号ではあるが、ただ単に演奏時間を"倍"にするためにあるのではなく、リピートすることによって表現に変化がつけられるということを教え、体験させる。必ず変化のある演奏になるよう「音」をよく聴いて確認しながらコントロールする。
 ちなみに出したい音(大きくするほうの声部は、指を高く上げてから深く打鍵し、控え目の音を弾くほうの声部は、指を上げずに鍵盤に乗せた指で(キーから離さないで)弾く。このことの具体的な指導を忘れないよう指導し、弾いてみせること。1回目に必要とされる音の流れ(譜例1)に、①として青鉛筆で矢印またはラインを弾き、2回目(リピート後)に必要とされる音の流れに②として赤鉛筆で矢印またはラインを弾き(譜例2)、
譜例1                  譜例2

「1回目は青いほう、2回目は赤いほうの音を聴く」というヴィジュアル的な説明をすれば、どの子にもわかりやすい。
 そしてその「テクニック」は、とりもなおさず、ポリフォニーへの布石、つまり、主旋律と対旋律の読み分け及び2声の聴き分け・弾き分けへの第1歩であることを忘れないよう。将来に応用できる大切なテクニックである。
 また、P.32(「ナトキンのおどり」でやったこと(「旋律線」の意識の持ち方が2通りあったこと。そのいずれをも弾き分けたこと。)が、この曲において求められることの布石であったことに子ども自身が気付くよう促す。(指導者自身が2通りの弾き方をして聴かせ、どう違うのかを問いかける。)
 以上のことは、くれぐれもできるまで時間をかけてレッスンすること。左右の音量が明らかにコントロールできていることを「音」で感じなければ前に進めない。テクニックだけ教えても音の流れを感じていなければ別の曲でも応用することはできない。
ティギーおばさんのおはなし(P.54)
 2拍という概念は1拍ずつの拍感がなければ理解できない。初めからに出会ったり、それらの名前を教えてしまうことで子どもたちはその抽象性に混同してしまうだけである。この本の進め方(1音符1打鍵の繰り返しによる、拍感の具体的体験とその積み重ね)の中で充分に育てられた拍節感を前提として、タイを教えると、+であることがどの子も「理解」できる。実際に
 ①で弾く(1拍ずつの認識) ......1段目
 ② タイをつけて弾く+であることを認識して正しく伸ばし、この体験が、「2拍」と呼ばれるものであるということを教え認識させる ......2段目
 ③のように2つの音符を使わなくても代わりにで表すことができるということを説明し認識させる ......3段目
 各段を順に弾いていくことで、「2拍伸ばす」ということがどういうことなのかを体験するので、どんな子も確実に「理解」できる。また2段目と3段目が全く同じリズムであることを、出てきた音(耳で聴く音)で納得できる。
 拍節感がない子どもに「2拍」という概念は持てない。それなのに初めからが出てくることは子どもの理解の範疇を超えていることであり、実は「伸ばす」という意味も解ってはいないのだということを、指導者は深く心に刻んでおかなければならない。まして、初めからニブオンプ、ゼンオンプなる名前を教えられても、よけいに混乱することとなる。




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